KEKの取り組み

KEKの取り組み。

KEKの取り組みイメージ
KEK では、次世代の直線衝突型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の実現に必須となる、
超伝導加速システムの確立・工業化や超高品質ビームの生成・制御技術の確立を目指し、
ILC加速器に関連した技術開発を推進するための施設として、
STF(超伝導リニアック試験施設)、ATF(先端加速器試験施設)、CFF(空洞製造技術開発施設)を利用して
研究開発を進めています。

ATF


Accelerator Test Facility
先端加速器試験施設

ILCの衝突実験には、極小ビーム(ナノビーム)の生成が必須です。先端加速器試験施設(ATF)では、ナノビームの生成と制御の研究開発が進められています。

ATFはILCの電子側加速器(主線型加速器を除く)と同じ構成となっています。電子源(電子銃と直線型電子加速器)で生成・加速された電子ビームは、ダンピングリング(円形加速器)において約1000倍も平行度の高い「超平行ビーム」に変換されます。この超平行ビームは最終収束系によるナノビームの実現に必須のものです。ILCではダンピングリングと最終収束系の間に衝突エネルギーまでビームを加速する主線型加速器がありますが、ここでの加速はナノビームの技術開発に必須ではありません。ATFはダンピングリングの超平行ビームをそのまま最終収束系試験ビームラインで利用してナノビームの研究開発を行う世界で唯一の試験加速器であり、世界中の大学・研究機関からの多くの研究者や技術者が参加するナノビーム研究開発の拠点となっています。

今までにATFでの目標に近い世界最小41ナノメートルのナノビームを実現しており、ILCで必要となるナノビーム生成技術をほぼ実証する成果が得られています。

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STF


Superconducting RF Test Facility
超伝導リニアック試験施設

超伝導RF試験施設(STF)は、ILC計画の基本技術である「超伝導高電界加速空洞」および冷却・保冷装置である「クライモジュール」の製造・運転技術確立のための研究開発を行う施設です。各種の超伝動加速システムの開発設備を集中的に整備し、その機能をKEK内や国内外の大学、研究所に供用して、超伝導加速器の発展に大きな貢献をしています。

「超伝導加速」は、ニオブ等の超伝導体で作った加速空洞を極低温まで冷却し、超伝導状態にして粒子ビームを加速する方式のことです。超伝導加速の最大の特徴は、その加速効率の高さ。マイナス271度Cまで冷却された加速空洞の内表面は超伝導状態になり、電気抵抗が生じません。電力損失や加熱が起こらず、空洞の中にマイクロ波のエネルギーを、きわめて効率良く送り込むことができるのです。

STFでは現在ビーム運転試験が行われており、ILCの仕様を満たす成果が実証されています。

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CFF


Cavity Fabrication Facility
空洞製造技術開発施設

ILCで必要とされる超伝導空洞は約8000台。これら空洞の製造歩留まり90パーセントを目標に、研究所と産業界が協力して研究開発を進める施設が「空洞製造施設(CFF)」です。CFFでは、1つの建屋内で超伝導空洞製造のほとんどの工程を実現することが可能です。超伝導加速空洞の量産に関する研究を、研究所における一貫した施設で行うことは世界でも初めての試みです。

超伝導加速空洞は、ニオブと呼ばれる稀少金属の部品を電子ビームで溶接して製造します。CFFは、ニオブ材料から超伝導加速空洞を製造するために必要となる「プレス機」「縦型旋盤」「表面検査機」「化学研磨機」「電子ビーム溶接機」等一連の設備を備えています。

CFFで製造した超伝導加速空洞は、ILCの評価基準値を満たす性能を達成しており、超伝導加速空洞の量産化に向けて順調に研究開発が進んでいます。

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